保磁力とは「磁化極性ををひっくり返すために加えなければならない逆向きの磁界」のことです。
つまり、保磁力が小さい材料は僅かな磁界の影響を受けただけでそれまで保っていた磁力が簡単に変化してしまいます。
逆に保磁力が大きい材料は永久磁石としてより安定して磁力を保ち続けます。
グラフから判るように永久磁石材料のフェライト、ネオジム磁石は鉄に比べるとかなり大きな保磁力があります。
何故このような大きな違いがあるのでしょうか?
次項目をご参照ください。
補足説明
磁石に吸いつく物質のことを強磁性体といいます。鉄材も磁石材料(フェライト、ネオジム)も勿論、強磁性体です。
強磁性体の中には外界からの磁気の影響が無くなっても磁石としての性質を残す硬磁性体と磁気の影響が無くなると磁石で無くなってしまう軟磁性体があります。
磁石材料は初めから永久磁石では無く、生産工程の中で強力な磁界を与え着磁します。弊社の着磁電源装置、着磁ヨークは主に磁石材料を永久磁石にする為に使用されます。
磁石材料は硬磁性体で前記した保磁力も大きいので着磁後も安定して永久磁石としての特性を保ち続けます。
鉄材の場合、混じり気のない純鉄は磁気が残留する割合が大変小さく、炭素等不純物を多く含む材料(ドリル、カッターの刃、ドライバーの先端等)は残留磁気が比較的大きくなります。
混じり気のない純鉄が永久磁石としての特性が無く、不純物を含む鉄材が僅かながら磁石としての性質を残すのは何故でしょう?
次項目で述べる磁区と磁壁が関係しています。

全ての強磁性体には磁区と磁壁が存在します。
強磁性体の結晶の内部で、原子の磁気モーメントの向きのそろった小区域のことを磁区といいます。磁区とは簡単にいうと結晶内のミニ磁石の事です。そして磁壁とは磁区と磁区との境界のことです。
通常強磁性体は、外部から磁気の影響が無い時、左図のように、磁気モーメントが内部で打ち消し合い、外部に磁力線を出さないような磁区構造を持っています。
上の図は強磁性体に外界から磁気の影響を与えた状態を示したものです。
外界から磁気の影響を受けると(例えば永久磁石を近づける等)、磁壁が移動して磁区の磁気モーメントがその方向を向くものが増えます。更に強い磁場を加えると、結晶全体が同じ磁場方向の磁区のみになります。 この状態を飽和と言います。
強磁性体が不純物の少ない純鉄の場合、外界から磁気の影響を受けると磁壁はスムーズに移動し、わずかの磁場で飽和に達します。しかし、外界から磁気の影響が無くなると磁壁は容易に移動し、元の純鉄に戻ってしまいます。
しかし不純物を含んでいる金属の場合、炭素等の非強磁性に磁壁移動がじゃまされ、飽和に達するのにより大きい磁場が必要となります。 そして磁気の影響が無くなっても磁壁の移動は元の状態に戻らず、僅かに磁化した状態になります。
鉄に炭素を混入した炭素鋼等は現在では他に優秀な磁石がありますので永久磁石としてほとんど使用されることはなくなりました。
上記で述べた磁壁の移動が容易に起こらない様にしたのが永久磁石材料(フェライト、ネオジム磁石)です。
しかし単純に不純物を混入させただけでは強力な磁石にはなりません。永久磁石を作るには特別の工夫が必要です。 (ここでは省略させていただきます。)
又、容易に磁壁が移動しない為、飽和状態(ここではそれ以上磁力が強くならない状態)にするのに、材料がもつ保磁力の2〜3倍の磁力が必要です。
現在最も強力な磁石とされているネオジム磁石は一旦磁化して磁壁が移動してしまうと逆向きの強力な磁力を与えても磁壁が元の状態に戻らない場合があります。
ネオジム磁石は日本で発明、開発されました。
携帯電話、モバイル機器等の小型化、高性能化はネオジム磁石が無くてはありえません。


何れの場合でも、鉄材は永久磁石材料と同様な磁力を持った磁石になる事はありません。
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